新年の抱負 ~育ちをつなげる~
 早いもので2学期も終わり、年の瀬を迎えようとしています。園行事の餅つきや歌声発表会も終了して、子どもたちはお友だちとそれぞれの冬休みの計画を伝え合い、とても嬉しそうにしています。この時期になると、子どもたちの自主性がぐんと伸びて特に5歳児は落ち着きと自信による風格のようなものさえ備わってきました。
 そのような年長児ですが、最近はいろいろな遊びの場面で保育者が介入せずとも自分たちでルールを決めて遊ぶ姿が見受けられます。そんな時にトラブルはつきもので、お互いの主張を譲らず思わぬけんかに発展してしまったり、意見の違いで戸惑ってしまい、遊びが中断されることもしばしばあります。保育者は子どもたちに任せながら、ここぞという時に話し合いを交えて解決の糸口をみつけています。折り合いをつけなければ、集団での遊びは達成しないことも学んでいるのです。
 昨日、年長児は各小学校の就学時検診を終えましたが、最近は幼稚園と小学校との連携が特に重要視されてきています。小学校の先生方も、幼稚園との連絡会議等様々な活動を新たに催していただき、子どもたちの日々の様子を尋ねてくださり、私たちも卒園児の様子やその他学校生活の様子を見聞きしてお互いの理解を深めております。就学前の子どもたちの生活を知ることで小学校以降の生活や学習の基盤の育成につながることを配慮し、互いの段差を少なくすることを目的として取り組みを進めています。3学期に行われる小学校見学での交流活動もその一環です。幼稚園の教育課程である発達に必要な体験を行えるよう、また遊びを中心として「育てたい力」が育つようにアプローチをしていきたいと考えます。
 保護者の方からお預かりした大切な子どもたちを、希望と夢というバトンに託して次のステージに渡せますよう、新学期を迎えたいと思うのです。平成最後の冬休みとなります。一家団欒のお正月をお迎えください。また、新年度もよろしくお願いいたします。
【結城 由里子】(平成30年12月)
感無量
 秋の園外保育も終わり、園児も様々な場所へ出向きました。各学年ごとに成長のテーマを掲げ、なおかつ楽しい時間が体験できるように創意工夫して、近隣や少し遠出の公園へ園バスを利用して出向いたわけであります。
 その成果も実って「サファリごっこ」や「クッキング」など子どもたちの気持ちがこもったイベントが、盛り上がりを見せてくれました。
 現在は大勢の方々の前に立って自分を表現することを楽しみに、歌声発表会や絵画展に向かって、子どもたちは生き生きと過ごしています。
 子どもの成長には楽しいことや出来たことへの成功体験がとても重要なことだと思います。やり遂げた気持ちや挑むことへのワクワク感など目に見えない育ちは幼児期に培われ、とても魅力的な人柄に育つと確信しています。感無量と思えるような感動や喜びを持って過ごしたいものであります。
 一人の喜びが全体の喜びになり、生きがいや目標に繋がっていくものと思います。澄み渡る空のように豊潤で満たされた心を育んでいきたいと考えております。
【園長 結城 文宏】(平成30年11月)
秋を見つけに
 晴天に恵まれた運動会も皆様のご協力のおかげをもちまして無事に終えることができました。『できっこないをやらなくちゃ』がテーマの運動会を終えた子どもたちは自信に満ち溢れています。できることが増えた喜びもありますが、なによりもその子自身の物事への意欲や自分以外の人との関わりあいが広がったことに成長を感じます。それぞれのご家庭でも十分に子どもたちの話を聞いてほめてあげたのでしょう。周りの人から認められたうれしさがこちらにも伝わってきます。
 このように大きな行事を終えた園ですが、戸外の遊びが気持ちいい季節になり、園外へでかける機会が増えて参りました。戸外は暑かった夏の反動で一気に秋の到来を感じ、特に公園では、たくさんの落ち葉や木の実を探しては見つけて持ち帰っています。ご家庭で公園へでかけた際には気づかないものも、友だちと同じ目線で外を歩くとさまざまな発見があるようで、競って秋みつけを楽しんでいます。
 そんな園外の一日、公園でリレーを行った際、年長児と年少児がペアになって手をつないでリレーを始めました。そこに三人で手をつないで上手に歩調を合わせて年少児二人と走っている年長児が目に留まりました。Rちゃんです。ペアの一人は昨日入園したばかりの年少児Mちゃん。知り合いだったのか入園してきたその日も、年少クラスになんども足を運んでMちゃんの様子をうかがってくれました。不安そうだったMちゃんでしたが、担任やRちゃんの働きかけでクラスにも徐々になじんでくれました。まだ入園して二日目のその日のリレーで、うれしそうにRちゃんと同じクラスのAちゃんと走っている姿に、ほのぼのとした空気が流れました。Mちゃんにとって環境の変化は大きかったかと思いますが、先生や周りのお友だち、年上のお姉さんによって少しずつ環境の変化にも対応できることでしょう。
 実り多い10月のこの季節を、子どもたち自身の力で気持ちよく遊び込み、それぞれが育ちあえるように、様々な工夫をして取り組んでいきたいと思います。
【結城 由里子】(平成30年10月)
運動会に向かって
 例年にない暑さに見舞われた7月、8月。夏休みのお預かり保育では、気温が40度近いという今までに経験したことのない暑さで、外でたくさん遊びたい子どもたちと、戸外遊びを十分にしてもらいたい私たちにとって、もどかしい夏でした。しかしながらさすがにお彼岸を迎えようとしている最近は、秋の気配を感じさせてくれるような天候で、子どもたちは元気に登園して、お友だちや先生と夏休みの思い出に話が弾み、笑顔いっぱいの新学期を迎えています。
 2学期はたくさんの行事があり、子どもたちにとって大きく成長を遂げる学期であると思います。とりわけ目にみえて成長を感じることができる運動会が、あと2週間後に迫ってまいりました。
 初めてリレーを経験する年中児は、リレーが大好きな子どもが中心となり、手には汗とバトンを握りしめて朝から練習を始めています。するとまるで磁石のように他の子どもたちもそこに集まり、クラス一体となって声援が始まり、その声に触発されて、気持ちも盛り上がります。ご存知の通りリレーはチームワークが大切で、足が速いだけではなく、バトンの渡し方や受け取り方など、相手あっての競技となります。一生懸命練習していますが、練習の時はうまくいった子どもも、大勢の人の前では緊張していつものように体が動かないこともあるかもしれません。しかし、子どもたちが友だちと一体となってやり遂げた表情や、転んでも起き上がりがんばろうとする気持ちは、ご家族の方が十分感じ取れることと思います。心と体が連動して、やった!できた!がんばった!また体をうごかしたい!という気持ちになってもらえたら、運動会の意図は達成できたことになります。小学校になれば、親子で競技ができる運動会はほとんどなくなります。幼稚園という今の時期に子どもたちと同じ空気を共有し、感動をわかちあっていただければ、園としてうれしい限りです。子どもたちを大きな声援で包み込み、さらにはご家庭の皆様自身も十分楽しまれてください。童心に帰って。
【結城 由里子】(平成30年9月)
道筋 ~それぞれの速さで~
 1学期も半ばを過ぎ、子どもたちは自分のクラスに愛着を持ち始め、さらにお友だちの輪も広がってきました。
保護者の方々におかれましては、「うちの子どもは日々仲良く遊んでいるかしら?」「園での活動はどんなことをしているのかしら?」など、ご家庭では見られない、子どもたちの姿が気になりはじめている時期ではないでしょうか。そういった声が聞かれるこの時期、園では保育自由参観を設けています。日々作成する様々な教師側の意図とねらいを活動内容に織りまぜながら、子どもたちの意欲や関心を高めていけるように、年少児は3日間、年中・年長児は4日間、子どもたちの様子を自由にご覧いただけます。その自由参観ですが、先日、年少クラスはカタツムリの製作を行いました。初めてのハサミの使い方などを学び、小さいけれど、個性豊かなカタツムリができあがったことだと思います。他の日には、今の時期にぴったりなアジサイの壁面製作も行いました。製作をするにあたって、園では少しだけ子どもたちを「不便」な環境にしています。なぞればきれいに仕上がるスティック状の糊は使わず、個体の糊を使って製作を行います。手でぬるぬるとした糊の感触を感じながら、必要な量を自分なりに考えながら使っていくのです。一人一人が糊の分量を受け止める感覚が違いますし、まだまだ修得途上にありますから、それぞれの子どもたちの製作する速さや完成度も違います。
 浄土宗保育教会理事長の友松浩志先生の言葉をお借りしますと、「たとえば山の頂上にいこうとするとき、そこに向かう道筋はいろいろあって、こっちから上る人もいれば、あっちから上る人もいる。難しい崖を上る人もいれば、平たんな道を行く人もいる。みんなに頂上に向かってほしいけれども、その人にとって、難しいならいかなくてもいいし、行く日や行く道は違ってもいい。でもそれぞれが試行錯誤して、それぞれの頂上にたどりつこうよ」とおっしゃっていました。(浄土宗保育教会機関誌より)
 ご家庭の皆様と私たち保育者は幼稚園というチームの名のもとに、様々な場面の子どもたちの様子を、ともにあたたかいまなざしで見守り、時に支えていただければ幸いに思います。
【結城 由里子】(平成30年7月)
光に応じて ~アジサイの花のように~
 今年は、例年よりも気温の上昇が著しく、場所によってはツツジとアジサイの花が同時に咲いているなど、何とも言えない調和を見ることができました。年長児と秋に収穫するためのおいもの苗つけに「ふれあい農園」に行った時の景色です。
 すがすがしい風をほほに感じながら、それぞれの子どもが4本ずつお芋の苗を持ち、農園の方の説明を聞いて土に植え込む作業を行いました。あらかじめ、農園の方々が子どもたちのために、ビニールで覆った畝(うね)に等間隔で穴をあけてくださっています。多くの子どもたちが、今年で三回目の苗つけになりますので、容易に苗つけを行うことができました。毎年のことながら、農園関係者の方々には、畑の管理や子どもたちが喜びそうな仕掛けをしてくださり、本当に頭が下がります。
 苗つけが終わった子どもたちは、畑のかたわらの空き地でバッタやカエルを捕まえたり、シロツメクサを摘んで花束にしたり、自然のなかで遊びに没頭しました。しばらくして昼食をとるために農園の小屋に入ったところ、先にトイレにきた三人の女の子たちがリラックスした様子で椅子に座って、足をバタバタさせながらおしゃべりを始めました。小屋の中のドアが風でひとりでに開く様子を見て、「あの陰には、おばけがいるよ」「いや、違う。ウサギがかくれてる」「先生、見てきて。こわーい」ときゃあきゃあはしゃぎながら想像を膨らませて会話をしている様子を、とても微笑ましく思いました。自然の中にあるゆったりとした時間の空間に、たくさんの会話の花が咲いていることをうれしく思います。
 まもなく梅雨に近づくと山門の釈迦像の脇にあるアジサイの花が、満開を迎えます。1年の間、太陽の力や風雨によってしっかりと根っこや茎が育ち、見事な葉っぱを茂らせています。アジサイは光に応じて花の色が変化して隣同士で1枚の葉っぱが仲良く共存共栄をしていきます。その様子が子どもたちの成長の姿と重なるように幼児教育に携わって邁進していきたいと思います。
【結城 由里子】(平成30年6月)
心の力
 青葉若葉が目にしみる季節になりました。年長児が制作した大型こいのぼりが爽やかな風に舞っています。
入園式から早や2週間。子どもたちは、それぞれ新しいクラスのおともだちと新鮮な気持ちで過ごしています。
お家の人と離れられずに涙を流している新入園児もまだちらほらと見受けられますが、少しずつクラスにも慣れ始めて、時間を追うごとに笑顔が見られるようになりました。年少児は、円状にイスを並べて初めて自己紹介をしたり、自分の名前とシールを当てっこしたり、と、すっかり自分の場所を把握しています。その自分のイスは心地よさそうで、「私の居場所」と感じ取ることができます。年中児は新しいクラスのおともだちと、「うれしい」「楽しい」といった言葉を互いに伝え合い、関わりを自分なりに深めています。年長児は、宇宙組さんや年少児のお世話をする姿が頼もしく、自分だけではなく、他者の存在を認めて、自制心(気持ちのコントロール)や自立心(自分で物事を決めて行う)、そして自尊心(自分を信じる)等の気持ちが備わってきていることが伝わってきます。
 5月からはそれぞれの子どもたちの、年齢や発達に応じた様々な教室がいよいよ始まります。たくさんの「不思議」や「興味・関心」を持つことができるように、また、子どもたち自身の心の力がステップアップすることを常に考えながら関わっていきたいと思います。
【結城 由里子】(平成30年5月)
目覚める ~感知能力を育む~
 公園の桜の花が満開に咲く頃、心豊かに新年度の始まりを迎えました。平成30年度、ご入園、ご進級誠におめでとうございます。
 今年度、80名の新入園児を迎え、園児230名の園生活がスタートとなりました。従来の教職員に新教諭1名を加えた 22名の教職員と4名の外部講師による幼児教育と、預かり保育を行ってまいります。
 国の新制度が平成27年より開始され、幼稚園、認定こども園、保育園とに分かれ、5才児までの保護者の就労支援制度が活発になりました。本園でも、預かり保育の充実を図り、幼児教育を中心に子どもたちと園生活を楽しんでいきたいと考えています。
 教職員の私たちにとって、1人ひとりの園児の成長が、一番の目的であり、例えようのない喜びでもあります。子どもたちに心身共に成長できる喜びを目覚めさせて、様々な出来事に感じ、触れさせることで知り得る能力を培わせていきたいと思います。
 今年度、園児、保護者、教職員が三位一体となって、成長の喜びが分かち合えるよう、幼児教育、保育に邁進していく所存であります。何卒宜しくお願い申し上げます。
【園長 結城 文宏】(平成30年4月)
彼方 ~その先にあるもの~
 平昌オリンピックも終わりが近づき、日本選手の毎日のメダルラッシュが、明るいニュースとして日々を楽しませてくれます。1つ1つのメダルに様々な選手の物語があり、結果だけではなく、そのメダルに関わりをもった人々の人間模様が、報道によってより一層の味わいをもたらせてくれます。
 私も高校生の頃、スピードスケートショートトラックの競技をしていましたので、スケートの報道になると、とても興味深く観戦をしています。スピードスケートで、3人一組で争うパシュートという競技があります。日本チームは一人一人の選手の能力はオランダなどの選手に比べてかなり低いのですが、持ち前のチームワークと技術力で、今シーズンは世界記録を連発しています。夏のオリンピックの400メートルリレーも、同様な事が起きています。
 日本人の持つポテンシャルは、身体的なものとは別に、精神的な特別なものが存在するといつも考えます。内面の持つ強さは恐らく世界ナンバーワンだと思います。それは日本にはその地方によって様々な四季や文化が有り、その中に個ではない全での教育が行われているからではないでしょうか。運動会や歌声・生活発表会、日々のグループ活動等、日常で当たり前のことが、幼児教育の中で全体(社会)として行われています。その結果、人に対する思いやりや優しさ、共有することの尊さなど言葉にならない程のものが、ほぼ3歳児から5歳児位までに身についています。子育てをする保護者の皆様が一番に感じる所だと思います。
 卒園・修了式を間近に控え、残すところは、生活発表会という大きな行事があります。全体で行う様々なかかわりが子どもたちの成長をより大きなものとし、内面に育つものが、遙か彼方のまだ見ない世界へと備わっていきます。
今年度もあとわずかですが、これから子どもの将来を考える時に、一人一人の子どもたちの、その先を見据えながら教育を行っていきたいものであります。
【園長 結城 文宏】(平成30年3月)
新年の抱負として
 冬休みも終わり、三学期が始まりました。始業式から元気よく登園してきた子どもたちですが、日が経つにつれて欠席する子どもが少しずつですが、ちらほらと増えてきました。急激に気温が下がったことによる、インフルエンザや喉からくる風邪が原因です。毎日の各部屋の消毒に加えて、子どもたちに注意喚起の声掛けをしました。
「ご飯をたくさん食べて、夜は早く寝るようにしましょう」と伝えると、間髪を入れずに「歯磨きも!」と真っ白な歯をのぞかせて応えてくれたY君。幼稚園での食後の歯磨きと家庭での習慣で、Y君にとって歯磨きは生活の中にすっかり溶け込んでいることがわかります。ご家庭では、夜休む前に歯磨きの習慣をつけるべく、根気よく声掛けをしてきたのだと思います。
 習慣と言えば、この冬休みに東京に行った際、レストランで食事をした時のことです。隣に座る若いご夫婦が静かにワインを傾けています。驚いたことに傍らには1歳をやっと過ぎたころの子どもさんがマイチェアーに座っておとなしく食事をしています。カジュアルなイタリアンレストランとはいえ、たくさんのお客がいる中で大声もあげずにシズカに食事をする姿に感心して、思わず声をかけました。すると、若いご夫婦は「預ける人がいませんので、ずっとこうして連れてきています。でも長くはいられませんけど」とにこやかに語ってくれました。さすがに都会の家庭だと納得するとともに、今の生活事情を物語っていると時代の移り変わりを感じました。社会に適応すべく、お互いに心地よい空間を共有するために、習慣化した食事の形なのでしょう。
 この習慣というものを、自分自身に置き換えて、良い習慣を今更ながら身につけようと新年早々に目標を立てました。恥ずかしながら、未だに輪ゴムでくくったままの年賀状の整理や、部屋の隅で埃をかぶっている文庫本の整理を遅ればせながら片づけている私自身の今年の目標は、「今やることを後回しにしない」ということです。
 新しい年を迎え、子どもたちにとってより一層居心地の良い幼稚園づくりができるように、教職員一同とともに見直して行きたいと思うところです。 本年もよろしくお願いいたします。
【結城 由里子】(平成30年1月)